マリアの手 ー 砂漠に自生する「復活の植物」

マリアの手 ー 砂漠に自生する「復活の植物」

乾いた砂漠に小さく丸まって転がる植物が、水に触れた途端、ゆっくりと枝を広げ始める、その不思議な姿から「復活の植物」と呼ばれる草があります。

学名を Anastatica hierochuntica、英語では「Rose of Jericho(エリコのバラ)」あるいは「Resurrection Plant(復活の植物)」と呼ばれるこの植物こそ、中東やエジプトで「マリアの手(Kaff Maryam)」と呼ばれるものです。

 

【砂漠に生きる神秘の植物】

マリアの手は、エジプトやシナイ半島をはじめとする乾燥地帯に自生します。

雨の季節には大地の湿気を吸って枝を大きく広げますが、乾期になると自が丸まり、まるで枯れた塊のようになります。でも驚くのは、その乾燥した状態でも数年後に水に浸ければ再び開き、まるで命を取り戻すかのように姿を変えることです。

その不思議な生命力から、古くから「再生」や「希望」の象徴とされてきました。

 

【聖母マリアの名を持つ理由】

アラビア語で「カフ・マリヤム(Kaff Maryam)」とは「マリアの手」を意味します。

イスラム世界ではこの植物が聖母マリアと結びつけられ、特に妊娠や出産を守る植物として信じられてきました。女性たちはこの草を身近に置き、分娩の際に用いたり、子孫繁栄や母性の象徴として大切にしてきたのです。

ヨーロッパに伝わると「エリコのバラ」と呼ばれ、キリストの復活と重ね合わせられました。キリスト教とイスラム教の双方において、この小さな植物は奇跡と守護の象徴として語り継がれています。

 

【伝えられてきた効能】

民間療法や伝承の中で、マリアの手にはさまざまな効能が語られてきました。

出産を助ける:分娩をスムーズにすると信じられ、妊婦のそばに置かれたり煎じて用いられる。

女性の守護:月経や生殖に関わるケアを助ける植物として知られる。

邪気払い・浄化:水に浸けて開いたものを家に置くと、悪しきものを祓うとされる。

再生の象徴:乾いても再び甦る姿から、心身の癒しと希望をもたらす存在とされる。

科学的な薬効としては確立されていませんが、古来から人々はこの植物に神秘的な力を見いだしてきました。

 

【エジプトの日常に息づく「マリアの手」】

この植物は今もエジプトの生活の中で使われています。

市場では乾燥したマリアの手が売られてますし、人々はそれを水に浸けて家に飾ったりもします。そして、その水はただの水ではなく「祝福された水」として扱われます。

庭や玄関にその水を撒くと、邪気を祓い結界を張ると信じられています。さらに興味深いのは、商売をしている人々の間で「お店や事務所にマリアの手を置き、その水を入口に撒くと商売が繁盛する」と言われていることです。

古代から受け継がれてきたこの慣習は、現代のエジプトでも健在で、街の人々の暮らしに溶け込んでいます。

 

【枯れても甦る奇跡の象徴】

「マリアの手」は、ただの植物以上の存在です。

その姿は、生命の不思議、再生の希望、そして母性と守護を象徴しています。

砂漠の乾いた大地で丸まるその草が、水に漬けると再び広がるその姿に人は「失われたものが戻る」「新たに生まれ変わる」奇跡を見てきました。

エジプトの家庭や商店で今も大切にされる「マリアの手」。

その小さな草は、長い長い時を超えて私たちに復活と守護の物語を届けに日本にやってきました。

↓こちらの画像は、チンキにするために漬け込んでもらった時のものです。なぜか、琥珀色になりました。神秘的な色で驚きます。

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